“下半身太り”の原因って?−Ⅲ
体を動かすことが多い生活を送っていると、顔や上半身のむくみが気になるとおっしゃる方は少ないようです。
日常の生活パターンの中で血流やリンパ液の流れが促進されるので、デコルテなどの洗面時に鏡を見て目立つ部分のむくみを解消するためのエクササイズが行われているとも言えるのでは?
時々、顔やデコルテのむくみが気になったとしても、首や肩など必要な部分へのストレッチといつもより少し長めに入浴するだけで、すっきりしたいつもの状態が取り戻せてしまう。
一時的なそれも、ほんの少しの努力でOKというわけです。
もちろん、1日中デスクの前にすわってパソコン作業が中心のオフィスワークばかりという生活パターンを送っていらっしゃるケースは真逆となります。
頭痛や吐き気やめまいや不眠症にまでつながるほどの“ひどすぎる肩こりや首こり”の職業病(?)と共に、顔やデコルテ部分のむくみにもお悩みの方は多くいらっしゃいます。
もっとも、「『むくみや見た目なんて気にしている余裕はなかった』とはひどい肩こりや首こりで悩み続けていらっしゃったお客さま方全員の当院での完全改善後のコメントです」というのが実態のようですが…
肩こりや首こりで当院の施療とセルフケアの指導をお受けいただいたお客さまのケースでは、ストレッチやエクササイズをつづけていただくうち、むくみも同時に、あるいはむくみの方が早く改善してしまうケースが100%。
皆さまが考えていらっしゃるより、早く改善するのが、内蔵の病気が原因でない、いわゆる“ふつうの上半身の目立つ部分のむくみ”。
でも、下半身のばあいは違うのです。
寝たり、横になったりしているとき以外は下半身へと体重がかかっているし、重力のせいですわっていても血液とリンパ液は下の方へと引っ張られてしまいます。
日常生活では、歩く以外に脚(あし)を動かすチャンスは少ない。
手や腕や首とはまったく違うのです。
下半身のばあい、どちらかと言えば動かないで力を入れることが多い。
動かずそのままの形で力を入れ続けている。
体の土台の役目が大きいので、当たり前かもしれません。
《動きが少ないだけではなく、やはり体重を支える土台である下半身は筋肉の量が上半身とは比較にならないほど多い》というのも問題。
このような原因が複雑にからみあった結果、《下半身には、無意識のうちに力を入れ続けるという癖が付いてしまっていることも多い》のです。
ひとことで言えば、「いったん硬(かた)くなってしまうと、弛(ゆる)めるのもずっとむずかしくなってしまう」のですね。
下半身を大きく4つにわけて考えてみましょう。
足首から下の部分である、つま先や足はとくに冷えますが、これは筋肉がほとんどないから。
冷えたりむくんだりするのもわかります。
血液を体の中心へと戻すポンプ機能が小さすぎるため、意識して足の指を広げたり、曲げたり、反らせたり、足の甲と足の裏を曲げ伸ばししない限り、間違った足を引きずるような歩き方だけではむくんでしまうというのもおわかりいただけるのでは?
前回申しあげたように毛細血管を流れる血液の速度は遅い(=秒速 約0.05cm)ので、それにつられて流れるリンパの流れも遅くなってしまう。
次に、足首から膝までの部分はどうでしょう?
ふくらはぎは第2の心臓として有名ですが、実は足先の次に冷えたりむくんでいるとお困りの方が多いのがここ。
でもこの部分への対処法は、さほどむずかしくはありません。
血液循環(けつえきじゅんかん)ポンプであるふくらはぎの筋肉ポンプを柔軟(じゅうなん)にして、大きく動けるようにしてあげれば良いのです。
多くの方々はこの部分のストレッチの必要性は十分にご存知。
そう、ストレッチを正しく行っていただければ問題はないはずなのです。
次は膝から脚の付け根までの間である太ももですが、ここのストレッチは形だけで済ませてしまう方が多くいらっしゃるのが大問題。
本人は正しいケアをしたつもりで、実際には何もやってないのと同じというのは最悪かもしれません。
次回“下半身太りの原因って?−Ⅳ”では、膝足首から膝までの部分と、この太ももの部分に付いては、ストレッチを正しくやられていらっしゃる方でも下半身太り・むくみ・冷えが改善しない理由とその対策まで申しあげられたらと考えております。
マニアックで面倒だとお感じになられないていどにブレーキをかけながらの説明を心がけますので、お付き合いいただければうれしいです。
最後は、忘れ去られてしまった感が強いお尻。
専門家でもない限りは無視している方がほとんどでしょう?
今、この記事をお読みくださっていただいている、そう健康に気づかっていらっしゃる皆さまししても、「えぇっ……」と驚かれたのでは?
一番の問題は、お尻がこったり硬(かた)くなったりするということをご存知ない方が多いということなのかもしれません。
《お尻のこりや硬(かた)さを解消しないことこそが、“下半身太り・むくみ・冷え”が完全改善しない原因となっていることに気付いていらっしゃらないことこそが問題である》と当院では考えております。
下半身太りやむくみや冷えで悩んでいらっしゃる方ならば、冷えているところの血行改善とリンパの改善を頑張ってケアなさった経験があるはず。
100円ショップで足の指を広げるグッズを買って使ったり、足を揉んだり、ふくらはぎを擦りあげたり、太ももをトントンと叩(たたい)たり、軽くもんだり。
股割(またわ)りといって、お相撲さんのように両脚を大きく開いて体を前に倒したり…
でも、お尻を叩いたり揉んだりという方は少ないかもしれませんね。
以前、一時的にではありましたが足圧をメインにして下半身太りやむくみや冷えの改善をお手伝いさせていただいた頃の話。
施療後一日ぐらいは細いままだけれどすぐに元に戻ってむくんでしまうという方がいらっしゃいました。
ぐうぜん昔かじったことがあった吸玉(すいだま=カッピング)を、お尻の硬(かた)くなっている数ヶ所に施療させていただいたところ、50年以上むくんでいたその方の脚(太ももの付け根から足首まで)と足(足首からつま先まで)のむくみも冷えも、そしてもちろん下半身太りも完全改善したまま、再発することが全くなくなったという実体験があります。
それがきっかけとなって勉強を始めて、当時日本でたったひとつだけあった電動式カッピングの資格を取ったということもありました。
もっとも、「現在は吸玉やカッピングの機械を使わずに、関節内部機能回復調整法と特殊なストレッチを数種類組み合わせることで、同等以上の効果を出しております」というのは余談ですが、現在、当院では特殊な器具や機械は使いませんのでご安心ください。
もし、むくみが取りきれないとか時間をかけてケアするとそのときは良いけれど元に戻ってしまうという方に申しあげたいことがあります。
「せっかくストレッチをなさるのなら、お尻までストレッチをやられてみてはいかがでしょうか?」
今回のまとめになりますが、「硬(かた)くなっている筋肉が血管やリンパ管を圧迫して流れを悪くしているのだし、やわらかい筋肉の収縮によって血液やリンパ液の流れは改善させられるのだから、筋肉をやわらかくして、なおかつその筋肉をうごかしましょう!」ということ。
もっと言えば、「硬(かた)くなっているばあいには柔軟(じゅうなん)にしてあげましょう」の一言につきます。
最後に、優しくさすって物理的にリンパの流れを促進させるという、一般的に知れ渡っている効果的な方法もありますが、これは表面のリンパが中心です。
ということで結論ですが、一般論で言えば、リンパドレナージュを行う前にまずはストレッチを正確に行いましょうということですね。
「リンパドレナージュは最後の仕上げに使う」という方法を、当院ではお客さまへとおすすめ申しあげております。
今回はリンパの流れを良くするためには、まずはリンパを引っ張っていってくれている血液を末端から体の中心まで動かしてくれるポンプである筋肉の動きを大きくするためにストレッチをしていただきたいというお話でした。
それも、「つま先からふくらはぎを通って太ももでストップするのではなく、見落とされることが多いお尻までしっかりとストレッチしてください」と申しあげました。
次回は、足首からつま先まで、足首から膝まで、太もも、お尻という4つの広い部分の中で見落とされがちな部分、一生懸命ストレッチをしても効果が得られないという残念な結果につながる部分を具体的にご紹介できたらと思います。