ダンスや表現スポーツのプロが≪しつこい坐骨神経痛≫で悩まされるのはなぜ?−Ⅰ:アンドゥ・オールは正確に!
以下の2回からなる記事でもっとも申し上げたいのは、しつこい坐骨神経痛に付いてなのですが、この記事の前半部分ではアンドゥ・オールを正しく行ってもらうため役立てていただけそうな整体師目線の情報にお付き合いいただければと思います。
さまざまなジャンルのダンスの上級車やプロの方々は、クラッシックバレエの基本レッスンを受け続けていらっしゃる方が多い。
私のような部外者というか門外漢はひじょうに驚かされた記憶が鮮明です。
現在はごく普通のことだと考えているのですが、昔はプロのポールダンサーやヒップホップのプロが週2回もバレエのバーレッスンのクラスを生徒として受講しているというイメージがわかなかったからなのです。
余談ですが、40年前、マドリードのアモール・デ・ディオスというフラメンコの有名な練習スタジオでギターの練習をさせていただいていたとき、知り合った数人のプロのダンサーからクラシック・バレーのレッスンも受けていると言われたこともあったことを思い出しました。
閑話休題(それはさておき)、10年ほど前から静かなブームとなっていて、現在ではすっかり定着した感のあるおとなバレエ”を趣味としていらっしゃる方もいらっしゃるかも知れない。
当院の記事としては少し毛色の変わった題材を扱いますが、様々な種類のダンスや表現スポーツをなさっている方やおとなバレエを趣味となさっていらっしゃる方々にお付き合いいただければと思います。
バレエと聞いてド素人の私が最初にイメージするのは、≪黒い稽古着を着たスリムな女性が、天井から糸で吊られたかのようにまっすぐでピンと伸びた美しい姿勢で、両足のつま先を綺麗に左右逆方向に向けた≫立ち姿。
あくまでも個人的な感想ですが、天井から糸で吊られたという前半のイメージには、「ヨーガのバンダやスポーツ系のドローインが秘伝であった頃から(?)、すでにインナーマッスルの引き上げ(内臓も?)がふつうの練習の中で行われていた」凄(すご)いものというイメージも重なります。
両足の踵(かかと)をくっつけたまま、にこやかに、つまり何の苦も無く自然に、両足を左右逆方向へと向けた立ち方。
大地と天を結ぶかのようなまっすぐに伸びた姿勢が取れていないと、一般の女性にはむずかしそうなバレエの基本の足形。
フランス語だとアンドゥ・オール(en dehors:外に)、英語だとターン・アウト(turn out:外へ回す)と呼ばれるそうですね。
むずかしいとは言うものの、この足形は基本中の基本だということ。
古武道の言葉、≪秘伝は基本の中にこそある≫を連想させられる、≪アンドゥ・オールはプロのバレエダンサーでも常に意識するほど完成がむずかしいもの≫といった主旨の発言も耳にしたことがあります。
最初に学ぶアンドゥ・オールの基本が正しくできていないとしつこい坐骨神経痛に苦しむことになる可能性があるということを申し上げたいのです。
このⅠの記事では、アンドゥ・オールのやり方や間違った癖が付いていると生じてしまう問題と当院のプロのダンサーのお客さま方がその問題防止のために行っていらっしゃった対処法を。
次回のⅡの記事では、今回の記事でご紹介申し上げる対処法では解消することができなかった、ハードな反復練習をつづけて来られたプロのダンサーに生じる坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)に付いて見ていきたいと考えております。
アンドゥ・オールを習う時に口を酸っぱくして指導されるのは、≪脚(あし)の付け根、または太ももの付け根から脚全体を外に回す≫ということ。
最近では一般に知られるようになってきていますが、脚の付け根と骨盤の間の関節は股関節(こかんせつ)という名前が付けられています。
この股関節から脚全体、つまり股関節から足のつま先まで全体を一本の棒のように外へと回すことがアンドゥ・オール。
専門用語で申し上げると、股関節の外旋(がいせん)となります。
バレエのお教室やスタジオで股関節外旋(こかんせつがいせん)を強調される理由は、悪い癖が付くとパフォーマンス性に大きな影響が生じるということ以外にも、膝や足を傷(いた)めてしまう可能性がとても高いためのようです。
実際に当院でしつこい坐骨神経痛を改善改善なさった異なる分野のプロダンサーの方々から異口同音(いくどうおん)にお話いただいた、間違ったアンドゥ・オールによる弊害(へいがい)には以下のようなものがあります。
膝の痛み:人により異なるが膝の中の方の手で触れないとことが痛くなり、ひどいケースだと4本ある膝の靱帯(じんたい)のうち1本が切れたり、という膝の中にあって関節の動きをなめらかにしてくれている半月板(はんげつばん)というクッションをいためてしまうこともある。
膝関節には捻(ひね・ねじ)るという役割がないので、少しだけだが痛みなく捻れるというのはただの関節の遊び”*にすぎない。とくに女性やお体の軟(やわ)らかい方が痛みもなく捻れるというのは、その遊びを無理矢理大きくしているので、膝に問題が出てくるのを防ぐことはできません。
ゆっくりと少しづつ、まじめにごまかしながら悪いことがばれないように継続的に頑張っていると言ったら言い過ぎかもしれませんが…
*ここで言う遊び”とは徒手施療技術で使用される専門的なものではなく、日常的に私たちが使っている遊び”、つまり誤動作や自然環境による変化に対する安全のための余裕のこと。具体的には、接合部や連結部に意図的に設けられたすき間やゆるみのこと。ブレーキやハンドル、電車の線路のつなぎ目の遊び”といった、一般的な遊び”の意味で使用しております。
外反母指(がいはんぼし)とその悪化による他の足指の変形:膝や足首をつかって無理に足先(つま先)を外に向けると足の外側が床から浮き重心や体重が足の裏の内側と足の内側側面に寄ってかかるからですが、これは靴で押しつぶされると言うよりも自分の体重でいつも親指を外側に押し出し続けることになるから。
O脚(おーきゃく):本来は捻じれないはずの膝の遊びを無理して広げるとオジサンのガニ股ではなくて女性に多いタイプの本物のO脚の原因ともなるので、元々X脚気味の方はとくに要注意です。
また、外反母指や、それその他の足指の変形が進むと、足首や膝関節、そして問題の股関節へも悪影響が出て悪循環に陥(おちい)ることがひじょうに問題となります。
脚が太る:ダイエットしてもスネの横の肉の盛り上がりが残ったまま治らない。
これに付いては、見た目の体型に付いてまったく気にしたことはなかった私は気にしたことはなかったのですが、お客さまで脚の筋肉が部分的に発達して脚のバランスが崩れると強調なさる方が多いのには驚かされました。
数多くの身体表現のパフォーマーの方々やさまざまなダンスのプロの方々に改善施療や身体動作向上指導をさせていただく過程で、身体の見せ方の重要性は十分に理解できております。
ちなみに、当院のお客さまではいらっしゃいませんでしたが、以前ダンスの初心者の方から、太ももの前の広い部分が太くなって困るとご相談をお受けしましたが、これはこの記事のテーマであるアンドゥ・オールの間違ったやり方とは無関係だと考えております。
しつこい坐骨神経痛:これに付いてはバレエ自体の練習というか、アンドゥ・オールが直接原因ではなく、そのときに何らかの原因で付いた癖が残り、別のジャンルのダンスや身体パフォーマンスのハードなトレーニングで、ある種の動作を反復練習する過程で坐骨神経痛を引き起こす直接原因の筋肉を緊張させる癖を付けてしまうためだと考えております。
アンドゥ・オールだけが原因で生じるものではないうえ、この記事の一番のテーマでもありますので、次回、詳しくご紹介申し上げる予定でおります。
最終的に当院の施療でしつこい坐骨神経痛を完全改善なさったダンサーや表現スポーツやパフォーマーの方々は、皆さまのタイプの坐骨神経痛へと直接効果があるセルフストレッチはご存知ではいらっしゃらなかったのですが、ご自身のお体に付いての知識の広さと深さもプロの方々。
股関節を外に回すアンドゥ・オールのブレーキというか邪魔になる筋肉へのセルフストレッチは実施なさっていらっしゃいました。
もし股関節内部や骨盤の関節に問題が無ければ、じゅうぶんに悪い癖は解消できていたはずですし、そのうえ坐骨神経痛で苦しみ始めることはなかったはず。
この記事にお付き合いくださった方で、まだ、アンドゥ・オールに自信がないのに、そのブレーキとなるいくつかの筋肉のセルフストレッチをやっていらっしゃらない場合には、ぜひとも以下の体の部分を伸ばす方法をお教室やスタジオの先生や指導者、先輩やお仲間におたずねになって毎日の習慣としていただければと思います。
ピンポイントで筋肉名を羅列したり細かい脚の回旋や回転具合を度数でお伝えしてもかえって複雑になりすぎるはず。
その代わり、お体の感覚に集中し伸ばしている部位に響きを感じるように、いわゆるご自身のお体と対話しながらセルフストレッチを実施していただくようお願い申し上げます。
伸ばすのは以下の部分となります。
・太ももの裏側、できれば裏側の内側半分を意識して伸ばす
・お尻後ろ側や横や斜め後ろの広い範囲でストレッチしながら、奥にあるインナーマッスルに響きを感じるように伸ばす
もし広い範囲を同時にストレッチするのがむずかしければ、お尻の斜め後ろの表面(アウターマッスル)とその奥、そしてお尻の真横を別々に伸ばしていただいてもOK。
どんなやり方でもOKですので、伸びたり、響いている感覚を実際に確かめながら力や角度などなどを細かく調整してもっとも効果が感じられる条件でおこなっていただければと思います。
次回はこの前後2つの記事のテーマである、ハードなトレーニングを毎日続けられるプロのダンサーやパフォーマーの方が坐骨神経痛で苦しむ理由についてお話させていただく予定です。
ダンスのハードな練習やトレーニングをつづけていらっしゃり、練習後のセルフストレッチもきちんと行っているのに、坐骨神経痛、腰痛、お尻の痛みなどでお困りの方やご自身ではどうしても納得いくレベルまで伸ばせない部分がある方は、一度、当院までご連絡ください。